「黒の試走車」(1962年 増村保造監督) まず断っておくが、この映画は今から61年前、1962年の作品だ。大昔の映画である。 そのころ日本の自動車産業はライバル社の新車情報をめぐってスパイ戦を繰り広げていた。映画を盛り上げるためのつくり話ではない。実際のビジネスの現場でも生臭い競争が繰り広げられ、作家の梶山俊之はそこ...
ミステリー
ミステリーの記事一覧
ブルーイグアナ 500万ポンドの獲物 (2018年 ハディ・ハジェイグ監督) 英国映画である。 泥棒のエディ(サム・ロックウェル)とポール(ベン・シュワルツ)は仮釈放された後、今はニューヨークにあるレストランで働いている。ある日、2人はイギリス人の弁護士キャサリン(フィービー・フォックス)から仕事の依頼を受ける。依頼内...
すべてが変わった日 (2020年 トーマス・ベズーチャ監督) 筆者は本作を「あ、ケビン・コスナーの映画だな」くらいの感覚で見始めた。そのため共演女優が誰かをチェックしておらず、見終わってからそれがダイアン・レインだと気づいた。筆者の世代にとってダイアン・レインは「リトル・ロマンス」(79年)で幼くしてスターになり、長じ...
金持ちが貧乏人の命でルシアンルーレットの博打を楽しむ 13/ザメッティ(2005年 ゲラ・バブルアニ監督) 拳銃の弾倉に弾を1発込め、こめかみに向けて引き金を引く――。映画「ディア・ハンター」で知れ渡ったロシアンルーレットを題材にした映画。フランスとグルジアの合作だ。 セバスチャン(ギオルギ・バブルアニ)はグルジア移民...
人間の対比がもたらす「希望」の物語 「ショーシャンクの空に」(1994年 フランク・ダラボン監督) 刑務所が舞台の映画ではジャック・ベッケル監督の「穴」やクリント・イーストウッド主演の「アルカトラズからの脱出」などが有名だ。両作品は物語の中心が脱獄だった。これに対して「ショーシャンクの空に」は獄中の人間模様に重点を置い...
大統領のご寵愛を求める男たち、憎悪と嫉妬の滑稽劇 「KCIA 南山の部長たち」(2020年 ウ・ミンホ監督) 1979年10月26日、韓国の朴正熙(パク・チョンヒ)大統領が暗殺された。当時筆者は大学生で、ついに死んだかと思った。射殺とはいかにも独裁者の末路らしいと。米国のCIAが暗殺を画策したという説も出たが、いまだに...
新進脚本家が遭遇した不穏な時代の殺人事件 バートン・フィンク (1991年 ジョエル・コーエン監督) コーエン兄弟の作品。監督はジョエル・コーエン、製作は弟のイーサン・コーエンが担当した。1991年度のカンヌ国際映画祭でパルム・ドール、監督賞、男優賞を受賞している。 1941年の米国。ニューヨークで成功した新進の劇作家...
薄幸な女の悲劇はシャロン・テート事件の投影か? チャイナタウン(74年 ロマン・ポランスキー監督) 公開からまもなく50年。何度見てもやるせない気分にさせられる作品だ。脚本を担当したロバート・タウンは本作でアカデミー賞脚本賞を受賞した。 舞台は1930年代のロサンゼルス。ギテス(ジャック・ニコルソン)は主に浮気の調査を...
リーマンショックの痛手を「昏睡バー」で巻き返すストリッパーの復讐劇 ハスラーズ(2019年 ローリーン・スカファリア監督) 女がスケベな男どもからカネを騙し取るストーリーと聞くと、男は総じて難色を示してパスするだろう。だが、ちょっと待ってほしい。この作品は一種の経済物語。事実を基に創作している。 舞台はリーマンショック...
黒覆面の男にレイプされた中年女性が味わう快楽の化学変化 エル ELLE (2016年 ポール・バーホーベン監督) 本作の予告編を見たとき、ストーカー映画だと思った。中年女性が暴行されたあげく、犯人から嫌がらせを受ける物語なのだと。ところが実際に見てみると全然違う。描かれているのは女の情念といえるだろう。監督は「氷の微笑...
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佳作・駄作1日1本