「坂道のアポロン」 1960年代の九州を舞台にした照れ臭いジャズの青春劇

1960年代の九州を舞台にした照れ臭いジャズの青春劇

坂道のアポロン(2018年 三木孝浩監督)

いわゆる今風の青春映画である。
1966年の長崎県佐世保市。高校1年の西見薫(知念侑李)が東京から転校してくる。薫は眼鏡をかけ、将来、医師になることが期待されている優等生だ。
彼は転校先の高校でやたらケンカが強くて誰からもが恐れられている不良の川渕千太郎(中川大志)と運命的な出会いを果たす。薫は幼少からクラシックピアノを学んできたが、ジャズのドラムを叩く千太郎と音楽でつながり、千太郎の幼なじみの迎律子(小松菜奈)を交えた3人で過ごすようになる。
薫は律子に恋心を抱くが、律子が恋焦がれるのは千太郎だ。だが千太郎は海で不良に絡まれているところを助けた深堀百合香(真野恵里菜)に思いを寄せる。その百合香は東京の大学生・桂木淳一(ディーン・フジオカ)に憧れているというすれ違いの人生。
薫と千太郎はふとしたことで仲たがいしながらも、文化祭で飛び入りのジャズセッションを披露したおかげで関係が復活。クリスマスの日にキリスト教会でジャズ音楽会を開く予定を立てるのだが……。
映画は医師として総合病院に勤務する20代半ばの薫の回想からスタート。優等生とケンカ番長、音楽好きなレコード屋の娘という主要人物の三角関係はいかにも漫画をもとにした脚本らしい設定だ。しかも好きな相手には好かれないというモヤモヤ感が漂う。見ていて、まあ、青春映画の定番という印象。これに桂木が大学で学生運動に挫折して帰郷してきたという60年代ならではの設定が加わる。
桂木がバーで米兵にいちゃもんをつけられながらも、得意のトランペットでジャズを演奏し、いきなり国際親善交流となるくだりなどは見ていて少し照れ臭い。そういえば薫が住む家では家政婦が給仕を務める西洋風のエレガントな夕食。こちらも照れ臭くなる演出だ。
まあ、あくまでも漫画が原作の青春映画。深くは考えてはならない。なにせ主演の知念侑李はジャニーズ事務所のHey!Say! JUMPのメンバーなのだから。
ただ、60年代の佐世保の雰囲気は良かった。街を歩く人々のレトロな感覚、電柱などの看板の文言、レコード屋の古めかしさ、10円玉をたくさん用意してかける赤い公衆電話など。当時、九州の小学生だった筆者にとっては懐かしい映像だ。
また、ジャズが好きな大人世代にも楽しみはある。アート・ブレイキーでおなじみの「モーニン」や映画「サウンド・オブ・ミュージック」で知られる「マイ・フェイバリット・シングズ」などが劇中に流れ、適度なスイングを与えてくれる。
ラストは3人のセッション。薫が弾き、千太郎が吹き、そして律子が歌を担当。律子が歌おうとしたところで映像が途切れ、エンドロールとなる。このエンディングは余韻が残る。粋な終わり方だ。
筆者にとって「マイ・フェイバリット・シングズ」はジャズのスタンダードナンバーで一番のお気に入りだ。とくにお勧めは45年前から聞いているチャック・ウェインとジョー・ピューマのギターデュオ。CDも持っているが、最近はユーチューブで聞いている。下記がそのURLだ。67点。

ちなみにGONTITIも悪くないよ。
https://www.youtube.com/watch?v=EjAX9w74TmA

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