昼顔

娼婦を愉しむ貴婦人の二面性

昼顔(1967年 ルイス・ブニュエル監督)

カトリーヌ・ドヌーブが24歳の全裸をシースルーで披露した快作。ブニュエル作品にしては分かりやすい。2018年にBD&DVDが発売された。
セブリーヌ(ドヌーブ)は医師の妻として上流階級に身を置く美女。不感症を理由に夫とはセックスレスだが、半裸にされて男にムチ打たれる自分を妄想している。
ある日、彼女は街の売春宿で良家の夫人が体を売っていると聞き、興味を抱く。数日後、売春宿の面接を受けて「昼顔」の源氏名をもらい、男たちに身を任せる。カネが目当てではない。背徳の快楽に酔いしれたいのだ。
セブリーヌは下卑た男どもに抱かれ、陶然たる表情で「最高に感じたわ」と呟く。だがチンピラの客に好意を抱いたことで運命が一変するのだった……。
人も羨むセレブ美女が夫とのセックスを拒絶しながら体を売るのは現代の日本でも起きている。「自分が商品になる感覚がたまらない」「お客から愛情の言葉を受けると涙が出るほどうれしい」「一日に何人もの男性と肌を合わせたい」などさまざまな理由でヘルスやソープでバイトしている。
こうした女性の代表格が古代ローマのメッサリーナだ。彼女は西暦39年に名門家のクラウディウスに嫁いだが、夫は精力ゼロ。メッサリーナは次々と愛人をつくって肉体を交え、夫が皇帝に就くとさらにエスカレート。夜ごと宮殿を抜け出しては売春宿で朝まで客を取り、快楽をむさぼった。
本作のセブリーヌは不感症を克服するために刺激を求め、起き上がれないほどの快楽に浸ることができた。あまり知られていないが、世の中には不感症の自分を改造するためにAVデビューする女性がいる。40代後半のベテラン女優K・Aもその一人。プライベートでのセックス経験はただの2回しかないという。彼女のような女性はAV撮影で未知の快楽を味わいたがる。あるいは快楽に悶える演技をすることで普通の女になれたという満足感に浸ろうとする。
女と快楽の因果関係は永遠のテーマ。美女の二面性はなかなか理解しがたい。だからこそ世の中は面白い。

おすすめの記事