アイズ ワイド シャット

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女も男も淫らな生き物である

アイズ ワイド シャット(1999年 スタンリー・キューブリック監督)

99年3月に73歳で死去した巨匠スタンリー・キューブリック監督の遺作。筆者は数あるキューブリック作品の中で本作が最高傑作だと思う。
ニューヨークの開業医ビル(トム・クルーズ)は、患者で友人のジーグラー(シドニー・ポラック)のセレブパーティーに招かれ、妻のアリス(ニコール・キッドマン)とともに出席。ジーグラーの書斎で麻薬による昏睡状態に陥った美女を救う。また、このパーティーで大学時代の同級生でピアニストのニックと再会する。翌日、ビルはマリファナでハイになったアリスから、かつて海軍士官の男と浮気したくなったと聞き、妻が全裸で男に抱かれる妄想にかられてしまう。
その夜、街をさまようビルはニックから秘密の仮装パーティーの話を聞いて興味を抱き、覗き願望を抑えることができない。仮面とマントを借りて仮装パーティーに潜入。ところが正体がばれて衆人環視のもとで追及を受け、身の危険を感じる。ある女性のおかげで窮地を脱するが、翌日その彼女が死亡したことを知って不安を覚え、夜の街で何者かに尾行されるのだった。
サスペンスタッチのストーリーの中にビルと妻の性欲と妬心、貸衣装屋の娘の小悪魔チックな視線、街で出会った娼婦、ジーグラーの愛人など、欲望というものの複雑さを表す仕掛けがほどこされている。まるでキューブリック監督が「人間はセックスと無縁で生きていけないのだぞ」と諭しているようだ。その通りなら正論だろう。人はみな、昼と夜の顔を持っているのだから。
見どころは仮装パーティーだ。参加者はハイソな金持ちばかり。まがまがしい音楽を伴う宗教めいた儀式を経て長身の全裸女性たちがあちこちでセックスにふける。エロスの耽美的な饗宴だ。われわれはこの種の怪しいパーティーが実在することを知っている。成り金のヒルズ族がタレントのたまごやAV女優を呼んで楽しんでいる話を聞くたびに想像をたくましくするものだ。
ジーグラーからパーティーの全容を聞かされたビルは、妻アリスにすべてを告白する。「僕たちはこれからどうする?」と聞くビルに、「すぐにファックするのよ」とアリスは告げ、結末を迎える。ファックの意味は撮影時70歳だったキューブリック監督の勃起願望かもしれないが、アリスが彼女自身に語った言葉とも解釈できる。
よくよく考えると、一連の出来事はアリスの浮気願望が原因だ。ビルはアリスの告白を受けて淫らな姿を想像。自身は性欲による煩悩につきまとわれ、一時は若い娼婦に手を出そうとまでした。セックスパーティーに潜り込んだのは事実だが、浮気が目的というより好奇心にせっつかれての行動と言ったほうがよい。要するに妻の告白でセックスの不条理な魅力に取りつかれた。それだけのことである。
だから本来なら、ビルは妻に謝罪する義務はない。アリスは自己の淫欲ぶりと戦っているのであり、「ファックするのよ」は「自分の浮気性を抑えるために夫とセックスするのだ」という自戒の念と考えればいいだろう。女も男も、人間は淫らな生き物なのだ。

蛇足ながら

本作で描かれる男女の快楽の交歓は秘密の仮面舞踏会が舞台になっている。S・キューブリック監督は宗教まがいの儀式を取り入れることで厳かともいえる雰囲気に演出したが、日本国内でこうしたエロい行為は会費制の乱交パーティーだけでなく、金持ちの間での私的な遊びとして密かに行われている。
数年前、筆者はあるAV女優から、彼女が有名なコンサルタントの豪華マンションに招かれているという話を聞いた。そのコンサルタントは彼女のほかにタレントの卵やモデルを呼んで豪華な食事を振る舞ったあと、大広間のような寝室の大型ベッドで3Pや4Pを楽しみ、帰りに小遣いをくれるそうだ。残念ながら、金額は教えてもらえなかった。
別のAV女優は知り合いの紹介屋に呼ばれて米国の有名IT企業の会長らが同席した食事会に出席。その会長と性行為をして10万円を受け取った。彼女は「最近は日本のAVが好きな中国人のお客が多い。私みたいな中堅は10万円だけど、有名な単体女優は一晩30万円以上よ」と話してくれた。その後も紹介屋から定期的に誘いを受け、小遣い稼ぎのために肉体を使っているそうだ。
そういえば1990年代、AV女優の村上麗奈が一晩数百万円でブルネイの皇太子の接待を担当したと週刊誌で報じられたこともあった。

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