レザボア・ドッグス

拷問と謎解きが交差する“任侠映画”

 レザボア・ドッグス(1992年 クエンティン・タランティーノ監督)

29歳のタランティーノ監督を世界に知らしめた傑作。香港映画「友は風の彼方に」のパクリだが、ハリウッドに新風を吹き込んだ。
「ミスターホワイト」「ミスターブラウン」など色で呼ばれる6人のギャングが宝石店を襲撃した。店には警官が待ち構え、ホワイト(ハーベイ・カイテル)と一緒に逃げたオレンジ(ティム・ロス)は腹を撃たれて苦しむ。2人が待ち合わせの倉庫にいるとピンク(スティーブ・ブシェミ)が到着して仲間に裏切り者がいたと言い張り、ブロンド(マイケル・マドセン)は拉致した警官を拷問するのだった。
レストランの会話から襲撃後に話が飛び、宝石店での見境のない殺戮の模様が語られる。殺戮映像はないが、観客は逃走中の銃撃戦や二丁拳銃でパトカーに発砲する光景を見て凄惨な場面を想像する。低予算を独特の編集でカバーした。現在と過去が行き交うのは黒沢明の「羅生門」のようだ。 この銃撃シーンにブロンドが楽しそうに警官の耳を切断する残酷描写と、裏切り者が誰なのかという謎解きがプラス。冒頭10分のヨタ話も下品で面白い。次の展開が気になるため徹夜明けの観客も睡魔を撃退できる。
主役のホワイトは仁義を貫く男。オレンジの負傷を自分の不手際のせいだと痛感し、彼を身をもってかばう。日本のヤクザ映画に傾倒するタランティーノらしい人物造形だ。土壇場で潜入捜査官が自分の正体をホワイトに明かしたのは宗教上の告白かもしれないが、信義による魂の叫びと考えたほうがしっくりくる。命を賭して友情に応えた。任侠映画に通じるものがある。

本作はハーベイ・カイテルにとっても記念すべき作品だ。マーティン・スコセッシ監督の「ミーン・ストリート」(72年)で主役を演じながらパッとしなかった中年役者が、24歳下の新鋭監督によってスターの道を歩き始めた。マイケル・マドセンとティム・ロスも本作で実力派俳優の仲間入りを果たした。タランティーノの型破りな才能が男どもを成功のオアシスに引っ張って行ったわけだ。
ちなみにタランティーノは本作を撮る前、ロス郊外のマンハッタンビーチにあるレンタルビデオ店で働いていた。週給200ドルだった。

 

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