「トゥルー・グリット」 利発な美少女と飲んだくれ男 ライフルの迫力が冴える敵討ちの西部人情劇

利発な美少女と飲んだくれ男 ライフルの迫力が冴える敵討ちの西部人情劇

トゥルー・グリット(2010年 ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン監督)

コーエン兄弟による西部劇。敵討ち物語だ。1969年の「勇気ある追跡」をリメイクしたもので、前作ではジョン・ウェインとキム・ダービーが共演した。
14歳の少女マティ(ヘイリー・スタインフェルド)は使用人のチェイニー(ジョシュ・ブローリン)に父を殺され、連邦保安官のルースター(ジェフ・ブリッジス)を雇って敵討ちの旅に出る。途中、テキサスレンジャーのラビーフ(マット・デイモン)も参加。チェイニーがお尋ね者のネッド一味に合流したと知り、山小屋で待ち伏せするが、ネッドを取り逃がしてしまう。さらに川で水くみの最中、マティはチェイニーに捕まり、人質にされるのだった……。
少女が敵討ちを決意するのは「レオン」(94年)に似ている。そのことだけでなく本作は映画によくある要素で構成されている。マティはラテン語を解し法律に詳しいしっかり者。口論するルースターとラビーフを大人のようにたしなめる。ルースターは飲んだくれ。マティはけなげで可愛い。
ありふれた設定ながら、魅力を放っているのは西部開拓時代の奇妙な人物が行き交うから。木に吊るされた死体を持ち去る先住民。熊の毛皮を着た歯科医は死体から歯を抜き取る。町では縛り首の公開処刑のためホテルが満室。物の本によると、縛り首は民衆の格好の見せ物で、上品な貴婦人も執行がよく見える部屋を予約して楽しんだという。
西部劇というと、ガンマンが拳銃を撃ちまくるイメージが強いが、本作はライフルとカービン銃に重きが置かれている。ルースターが山小屋でライフルを構える姿は「山猫は眠らない」(93年)や「アメリカン・スナイパー」(14年)のごとし。銃の効果音とともに迫力満点だ。西部劇では珍しい闇夜のライフル狙撃の緊迫感が溢れている。
見どころはルースターがマティとともに荒野を疾走するラスト。夕日を浴びていた2人はいつしか青い色調の夜に溶け込み、見上げると息をのむような満天の星。だが、美しい星々は雪に変わる。馬は力尽き、マティを両手に抱いて走るルースターは「俺も年を取った」と呟く。
息子と不仲の彼はマティをわが子のように守ろうとし、マティは彼を父のごとく慕っていたが、再会はかなわなかった。ひと冬の冒険が少女に影響を与えたことを示唆して物語は幕を閉じる。
これぞ珠玉の西部人情劇。さすがはコーエン兄弟だ。

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