「氷の微笑」 シャロン・ストーンがベッドシーンを披露。ブルーレイをスロー再生したい

シャロン・ストーンがベッドシーンを披露。ブルーレイをスロー再生したい

氷の微笑(1992年 ポール・バーホーベン監督)

公開から29年。シャロン・ストーンの全裸ファックに股間を燃えたぎらせた読者諸氏も、ED薬に頼る年齢に達したのではないか。3年前、ブルーレイが発売された。再見すれば、排尿専用となっている股間に若かりしころの活力が蘇るはずだ。
元ロックスターがセックスの最中に惨殺された。刑事のニック(マイケル・ダグラス)は被害者の恋人で小説家のキャサリン(シャロン・ストーン)を事情聴取。キャサリンは事件を予見するような小説を発表していた。彼女の身辺を探るうちにニックはその美しさにひかれ、彼の恋人で心理学者のベス(ジーン・トリプルホーン)は2人の関係を危惧する。
そんな折、ニックを目の敵にしていた内務捜査官が射殺される。犯人として疑われたニックは夜の街でクルマにひき殺されそうに。そんな彼をキャサリンは誘惑し、くんずほぐれつの肉体関係になだれ込むのだった。
過激なセックスシーンを盛り込んだエロティックミステリー。シャロン・ストーンは吹き替えを使わず体当たりの濡れ場を披露した。推定Cカップの胸と形のいい臀部が扇情的にズコバコ動く。すべてがシャロン・ストーンの本物の肉体だ。素晴らしい。美しい。いやらしい。
話題になったのが事情聴取のシーンだ。キャサリンは上から目線のしゃべりで長い脚を組み替える。なんと股間はノーパン。DVDのスロー再生でヘアと縦スジが見えると評判になったが、BDはさらにクッキリ。バーホーベン監督はDVD発売の際に、秘部が見えることをシャロン・ストーンに知らせたが、彼女が映像の修正を求めることもなかったことを明かし、「大した女だよ」と度胸の良さを褒めたたえている。そもそも彼女は同じバーホーベン監督の「トータル・リコール」(90年)での脱ぎっぷりの良さが評価されて本作に起用された。
シャロン・ストーンに限らず、美女は見せたがりなのかもしれない。そういえば、AV女優の多くは「デビュー作の撮影前夜は緊張しながらも、翌日の仕事が楽しみで眠れなかった」と告白する。風俗経験のない正真正銘の〝初脱ぎ〟の女性も同じらしい。誰かに見てもらいたくて仕方ないわけだ。先日乗ったタクシーの運転手によると、深夜に若い女性客が支払いの際に脚を開き、ノーパンの恥丘を見せることがあるそうだ。女とは何か? 考えれば考えるほど迷宮にはまってしまう。
それはともかく、本作だ。物語はキャサリンへの疑惑から、かつて彼女と関係していたベスの過去に移り、ニックと同僚は右往左往させらる。彼らを振り回すのが頭脳明晰なセレブのキャサリンという構図だ。キャサリンは嘘発見器にかけられても気持ちが揺らぐことがない。まるでゴルゴ13のように人間離れした冷静沈着ぶりは少し漫画チックでもある。
本作については今も「真犯人は誰?」と疑問が聞かれるが、バーホーベン監督もシャロン・ストーンも犯人を明言している。ラストのアイスピックを素直に受け止めればいい。ベスの部屋の錠前が壊れていたことなどがその根拠で、ほかにもいろいろと伏線が仕込まれている。
ただ、結末の射殺など、ちょっとご都合主義な印象は否めない。そうした疑問と闘いながら新たな発見ができる傑作と言えよう。

ネタバレ注意

本作はラストでベッドの下に置かれたアイスピックがアップになる。そのことでキャサリンが真犯人だということが暗示されるため、公開時には「言葉を使わずに真相を語るヒッチコック的な手法」と評されたりした。たしかに映像だけで観客に「彼女が犯人だよ」と語るのはおしゃれな演出法だ。傑作「ユージュアル・サツペクツ」(95年、ブライアン・シンガー監督)もケビン・スペイシーの足の運びで真相を物語っていた。どちらも評価したい。
ただ疑問がある。キャサリンはなぜ殺人を犯したのかということだ。本来なら、殺人犯には動機があってしかるべきだが、そんな合理的な理由は見当たらない。ではなぜ殺したのか。
おそらく答えは快楽殺人なのだろう。先般、犯人が逮捕された茨城県の家族4人死傷事件など、最近は日本でも「人を殺してみたかった」という理由で凶悪犯罪を起こす連中がふえている。キャサリンもそうした仲間ではないだろうか。
本作の脚本にはそのことを暗に物語っている部分がある。前半でキャサリンはポリグラフ検査(嘘発見器)を受けるが、嘘をついている形跡はなかった。警察関係者(元刑事)に聞いたら、現在ポリグラフは日本の捜査では証拠として採用されないそうだ。「だけど」と前置きして、彼はこう言う。
「ポリグラフ検査の最中に嘘をついて反応が出ない人間はいない。絶対に嘘はバレる」
だがキャサリンは嘘がバレなかった。
なぜなのか。
例の警察関係者の言葉が興味深い。
「重度の麻薬中毒者と狂人はポリグラフをすり抜けることがある」
なるほど。この「氷の微笑」では、キャサリンは狂人だった。だから嘘発見器の追及をかわし、さらに犯罪を犯したということになるだろう。豪邸に住む売れっ子小説家の正体は頭のおかしい殺人狂というわけだ。なんとかと天才は紙一重ですなぁ。

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