エヴァの匂い

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猫女に入れ込んだ新進作家の破滅

エヴァの匂い(1962年 ジョゼフ・ロージー監督)

ジョセフ・ロージー監督の代表作のひとつ。
舞台はイタリア。タイヴィアン(スタンリー・ベイカー)は自作小説が映画化されて大ヒットした新進作家。フランチェスカという美しい婚約者もいる。その彼の前に高級娼婦のエヴァ(ジャンヌ・モロー)が現れる。彼女の怪しい色気に魅せられ、婚約者そっちのけでのめり込むタイヴィアン。エヴァの肉体を味わうが、自分の女になってくれないことに苛立つ。彼女の冷笑に失望してフランチェスカと結婚するも、エヴァへの未練を断ち切れず、新妻を自殺に追い込んでしまうのだった……。
将来を嘱望された若き作家は美しさで婚約者に劣る女に引き寄せられてしまう。はたから見れば、こんな性悪女に惚れこむあんたがバカなんだよと言いたくなるが、世の中には自分に振り向いてくれない女に熱を上げる男がいるものだ。
本来、作家という職業は人間を観察し、男女の愚かさを熟知しているものだが、タイヴィアンにはそれができない。なぜなら彼の小説は兄が書いたものだから。なるほど盗作作家だから自分を客観視できないのだと、すとんとふに落ちる展開だ。
エヴァは男を破滅させる娼婦だが、計算ずくで動いているのではない。本能のままに男をふり回し、タイヴィアンはふり回されることに喜びを見いだす。S女とM男の関係に近い。
猫好きの人間は猫の冷たさがいいと言う。猫は生まれつきばかだから人にこびることができない。尻尾を振って飼い主に尽くす犬とは本質的に違う。
本作のフランチェスカは犬のように献身的にタイヴィアンを愛する。一方、エヴァは猫のように突き放す。男は従順な女を裏切り、自ら転落に向かう。世の中にざらにある悲劇だ。
困ったことにエヴァは時に優しい面も見せる。盗作の事実を打ち明けてめそめそするタイヴィアンを抱きしめる。こうした優しさを男は女の本心と勘違いし、さらに深みにはまることに。その先で待ち受けるのは身につまされる結末だ。不倫が文化であるように、破滅もまた文化なのだろう。

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