さよなら子供たち

そして少年はナチに殺された

さよなら子供たち(1987年 ルイ・マル監督)

ルイ・マル監督が自ら脚本を書いた自伝的作品。第44回ベネチア国際映画祭金獅子賞などを受賞した。
1944年、ナチス・ドイツに占領されたフランス。クリスマス休暇を終えた少年ジュリアン(ガスパール・マネッス)は母に見送られて寄宿学校に戻る。学校には3人の新入生があり、その一人のジャン(ラファエル・フェジト)は優等生のジュリアンをしのぐほど優秀だ。
ジュリアンは自分のことを語らないジャンに興味を抱き、宝探しの際に一緒に道に迷ってしまう。この一件で2人は仲良くなり、ジュリアンはジャンが豚肉を食べないことなどからユダヤ人だと気づき、彼をかばおうとする。
だがある日、寄宿舎にゲシュタポが現れ、ジャンらユダヤ人の少年3人と校長のジャン神父を連行する。神父はユダヤ人をかくまったことを罪に問われたのだ。子供たちの別れの言葉に神父は「さよなら子供たち」と返し、ジャンはジュリアンと無言で見つめ合う。ジャンたち3人はアウシュビッツで、神父はマウトハウゼンで死亡したというナレーションが流れるのだった。
ジュリアンは母親と離れたくない甘えん坊。一方、ユダヤ人のジャンは父が捕まり母は行方不明でゲシュタポの影に怯えている。同じ中学生でも人種によって命の危険が違うのがナチが支配するフランスの実情だ。
映画は徐々にドイツ兵が増え、ドイツに協力する義勇兵も登場。レストランではユダヤの老人が義勇兵の脅しを受け、女性客から侮蔑の言葉を浴びる。友情が生まれたのにジャンは連行され、ジュリアンは目に涙を浮かべる以外何もできない。ルイ・マル監督は説教調にならず、少年たちを淡々と描くことでナチの犯罪を忘れてはならないと語りかける。
彼らが逮捕されたのは食料の横流しでクビになった少年ジョゼフの密告のせいだった。ルイ・マル監督は「ルシアンの青春」(73年)でジョゼフの原形ともいえるゲシュタポの協力者を描いた。こちらも見応えのある問題作だ。

 

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