兵隊やくざ

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インテリと極道が軍隊の卑劣漢どもに立ち向かう

兵隊やくざ(1965年 増村保造監督)

この10年ほどで日本は大きく変わった。「暴力反対」が叫ばれるようになったのだ。筆者の小学~高校時代は学校で教師が生徒に鉄拳制裁を加えて平然としていた。本来、戦後の日本の教育はかつての精神主義を反省し、平和の尊さを教えることを本義としたはずだ。だが、暴力教師は大手を振って学校内を歩いていた。あれが現在の出来事だったら、教員の半分は懲戒免職だろう。今の日本が野蛮な国民性を浄化しつつあるとしたら、まことに喜ばしい。

この「兵隊やくざ」は殴る蹴るの連発だ。舞台は1943年の満州。関東軍の古参兵・有田(田村高廣)は猛烈な軍隊嫌いで、「バカかきちがいでないと耐えられない」と見下している。そこに初年兵が入隊し、有田は大宮(勝新太郎)というやくざ者の指導係を押し付けられる。
暴れん坊の大宮は喧嘩は敵なし。入隊するや砲兵隊の弱い者いじめを看過できず、大勢を相手に大立ち回りだ。そのため砲兵隊の伍長から苛烈な制裁を受けるが、有田の機転によって反撃を許され、「一番痛いのをやります」と伍長の指をへし折る。だが後日、伍長は階級をちらつかせて有田に報復。大宮を集団でリンチするのだった……。
暴力を否定する大卒と腕っぷしの強い極道。まるで水と油のでこぼこコンビが互いをかばい、悪いヤツらに立ち向かう。大宮を絶対に負けないスーパーマンに描き、お涙ちょうだいにならないところが見ていてスカッとさせられる理由だ。
有田の軍隊批判にはインテリの知性が漂っている。戦前の日本は大卒者が少なかったが、彼のような良識ある軍人は存在したはず。ただし、それも戦場の狂気にかき消されてしまった。
公開された65年は敗戦から20年。若いころ軍隊の不条理に泣かされた観客は「こんな上官が欲しかった。戦前の日本は狂っていた」と留飲を下げた。軍隊の陰湿さを糾弾する内容ではないが、それでも一見の価値ありの痛快娯楽作だ。
卑劣漢が跋扈(ばっこ)するのは今も同じ。自費出版の編集者によれば、現代のサラリーマンが小説本を作るときに一番書きたがるのは自分を虐げた経営者や上司に復讐する話だそうだ。
ちなみに原作の有馬頼義は66年に「赤い天使」を発表。こちらも増村監督で映画化された。主演は芦田伸介と若尾文子のコンビだった。

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