モーリス

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杉田水脈と同性愛への偏見

「モーリス」(1987年 ジェームズ・アイボリー監督)

先日、TBSの元社員から性的暴行を受けたことを告発したジャーナリストの伊藤詩織さんが自民党議員の杉田水脈を提訴した。伊藤さんの暴行被害を「枕営業の失敗」「彼女がハニートラップを仕掛け(た)」「被害者ぶるのもいい加減にしてください」と攻撃した匿名の誹謗中傷に対して、杉田が「いいね」を押したため、精神的苦痛を受けたとして220万円の損害賠償を請求したのだ。

このことで思い出したのが2年前の「新潮45」廃刊をめぐるゴタゴタだ。杉田が「LGBTは生産性がない」という趣旨の原稿を寄稿して物議をかもし、翌月、同誌が杉田擁護の特集を組んだことからさらに火に油をそそいでしまい、廃刊に追い込まれたのだ。杉田は国会議員という立場でありながら、LGBTというマイノリティーの人々に対する差別的な考えを披露し、伊藤さんの件ではレイプ被害者の女性を口汚く罵る書き込みを称賛したことになる。

この「モーリス」は男の同性愛の物語だ。英国の上流階級の文化と厳格な身分制度が美しい映像で描かれている。
1909年、英国ケンブリッジ大の学生モーリス(ジェームズ・ウィルビー)は学内で美しき青年クライブ(ヒュー・グラント)と出会う。クライブは同性愛に文学的理解を示す知性派だ。2人は引かれ合い、深い関係になる。

卒業後、モーリスは株の仲買人、クライブは弁護士の道を選ぶ。ある日、大学の学友だったリズリー卿が同性愛の行為をしただけで逮捕され、社会的地位を失った。クライブは自分の性に後ろめたさを覚えて女性との結婚を決意。孤独をかみしめるモーリスに猟場番の若い男が近寄るのだった……。
「ブロークバック・マウンテン」(2005年)、「ミルク」(08年)、「君の名前で僕を呼んで」(17年)など同性愛の苦悩を扱った映画はいくつかある。その中で本作が秀逸なのは20世紀初頭の英国の性的な偏見を描写しているからだ。

「同性愛者はムチ打ちされて懲役刑を受ける」「以前は死刑だった」というセリフが登場。モーリスが医師に性の悩みを相談すると「汚らわしい」と罵倒されてしまう。ふだん理性的な紳士であるこの医師ですら、態度を豹変させるのだ。リズリー卿の逮捕は新聞で大々的に報じられた。松柏社の「映画でわかるイギリス文化入門」(板倉厳一郎ほか著)によると、英国では同性愛は1967年まで違法で、劇作家のオスカー・ワイルドは禁錮2年の刑に服したという。

本作は20世紀初頭の英国の田園風景の美しさやモーリス、クライブの美男子ぶりに女性の映画ファンが魅了された側面もあるが、主題はやはり差別問題である。社会全体に圧倒的な偏見があり、刑罰が待ち構えている以上、愛する男と男は別れなければならなかった。ついこの前の67年まで違法だったとは恐ろしいことだ。

杉田が書いた原稿は生産性があるだの、ないだという問題だけでなく、性的マイノリティーに対する偏見を多角的に述べている。たとえば女子高の生徒は同性愛に走っても成長すれば男が恋愛の対象になるとし、そうならない人は不幸だと断じている。女性のレズビアンが一生つづくのは不幸だというわけだ。そんなことを他人が決めつけていいのか。杉田にそんな権利があるのか。

そもそも本当の不幸は差別主義者が議員バッジをつけ、その応援団がヒステリックな声をあげてLGBTの人々を痴漢のレベルにおとしめたことだ。傷口に塩をすり込むヘイトスピーカーがいるかぎり、安倍右翼政権に国民が飼い慣らされてきた日本はモーリスの時代の英国と大差ない。
衆議院議員経験のある政治評論家に聞いたら、杉田は「ネット右翼のアイドル」と呼ばれているそうだ。彼はこう教えてくれた。

「マイノリティーの人格を否定したり、野党の発言を妨害すれば、ネトウヨだけでなく一部の心ない自民党議員からも『頑張れ』とエールを送られることになる。彼女(杉田)はそれが喜びなのでしょう。今回の訴訟の発端になった伊藤さんの暴行事件では、安倍首相に近い人物が告発されている。安倍首相の代わりに『いいね』を押したつもりではないか。また、右翼的な言動をすればするほどネトウヨ界で自分の人気が高まるとも考えているのです。今回の提訴で本人はニンマリしているかもしれません」

また、ITの専門家によると、ネット右翼はマイノリティーやリベラル派の人々への攻撃文を書き込み、自分の投稿に「いいね」が押されることに恍惚とした喜びを感じるという。彼らにとって自分が書いた誹謗中傷は勲章のようなもので、仲間たちにひけらかしたがる。だから取り下げることもなく、長らく掲載されている。他人を誹謗中傷した文章を見せびらかしたがるとは猟奇的な心理だ。そんなヤカラが国民の一部にいるのだろう。このITの専門家によると、ネット上で大炎上させる連中は数多くのハンドルネームを使い分けているだけで、「実は全国に17人しかいない。つまり17人で炎上させることがあるのです」とのことだった。

杉田は自分の親分の安倍首相のポン友である元TBS社員のために伊藤さんを貶めようとしたのかもしれない。そうであれば、三下ヤクザが親分のために暴走するようなもの。歪んだ忠誠心といえようか。

と同時に、杉田はヒトラーのように誰かを悪者にして攻撃し、自分の人気取りに利用したかったのだろう。そのためにLGBTの分断まで画策した。さすがは自民党議員。あっぱれ!

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