行きずりの女を助けるために依頼を引き受けるニヒルな殺し屋 処刑遊戯(1979年 村川透監督) 松田優作と村川透監督は「遊戯」シリーズを3作撮っている。「最も危険な遊戯」「殺人遊戯」(ともに78年)に続く最後の作品がこの「処刑遊戯」だ。大野雄二によるおなじみの主題歌が一段と洗練されて耳に響いてくる。 冒頭。殺し屋の鳴海昌...
モリケンの★5映画
殺害の音声を入手した盗聴屋に取りついた罪悪感と妄想 カンバセーション…盗聴…(1973年 フランシス・フォード・コッポラ監督) 1974年のカンヌ国際映画祭パルムドールを獲得したコッポラ監督の意欲作だ。全編を流れるピアノの主題曲が秀逸。耳に残るのだ。 主人公はサンフランシスコの大物盗聴屋ハリー(ジーン・ハックマン)。あ...
若者がベトナムで人間性を失うさまを描いたキューブリックのブラックジョーク フルメタル・ジャケット(1987年 スタンリー・キューブリック監督) 筆者は感性が鈍いので、1988年の公開当時に劇場で本作を見たとき何がいいのかよく分からなかった。新兵が鬼教官からしごきを受けてベトナムの前線に送られ、狙撃兵の攻撃を受けて右往...
暗殺者、やさぐれ医師、娼婦の3人に芽生える連帯とプラトニックラブ ときめきに死す(1984年 森田芳光監督) この「ときめきに死す」が公開された1984年、大晦日の「NHK紅白歌合戦」で沢田研二は「AMAPOLA」を歌った。この曲は同年のヒット映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」(セルジオ・レオーネ監督...
金大中に重りをつけて海に沈めようとしたKCIAと彼らに協力した自衛隊員 KT(2002年 阪本順治監督) 一昨日(6月30日)、東京・千代田区にあるホテルグランドパレスの営業が終わった。1972年2月の開業から49年間営業を続けてきた。まさに半世紀である。このニュースを聞いてもう一度見たくなったのが金大中事件を描いた本...
血と腐敗臭が漂う残酷映像と「七つの大罪」の謎解き セブン(1995年 デビッド・フィンチャー監督) 「羊たちの沈黙」以後、ハリウッドのミステリー映画は猟奇性を増した。「ハンニバル」(2001年)、「ソウ」(04年)、「消えた天使」(07年)、「ハングマン」(17年)など、数え上げたらきりがない。この「セブン」もそうした...
盲目の下級武士VS達人の重役 妻を汚された男が挑む真剣勝負 武士の一分(2006年 山田洋次監督) 藤沢周平の時代小説を映画化。「たそがれ清兵衛」(2002年)、「隠し剣 鬼の爪」(04年)に続く山田羊次監督による藤沢シリーズの完結編だ。 舞台は藤沢の小説に毎回登場する海坂藩。藩主の毒見役を務める三村新之亟(木村拓哉)...
在日朝鮮人2世のヤクザに大物右翼、自民党副総裁、力道山が絡んだ日本の黒歴史 実録東声会 初代 町井久之 暗黒の首領(2006年 辻裕之監督) 敗戦後の東京で愚連隊からヤクザ組織「東声会」を起こし、構成員1500人を率いた町井久之の半生を描く。後編の「完結編」とDVD2巻で構成され、小沢仁志が町井を演じている。政界と闇社...
密室とパリの夜景 殺人事件を舞台にした悲しき女の情念 死刑台のエレベーター(1958年 ルイ・マル監督) ルイ・マルが25歳で撮った初監督作品。若くして世界に才能を見せつけた。 公開時、スクリーンに登場する小物が注目された。日付を印字した紙がめくられる卓上カレンダー、電動鉛筆削り、ガスライター、超小型カメラなどはまだ珍...
本物になれなかった男の悲哀 ラストシーンで笑いながら涙が… ディア・ドクター(2009年 西川美和監督) 何度見返しても面白い作品だ。 舞台は人口1000人余りの山間部の村。ここに村営診療所に勤め、村人全員から慕われる医師が働ている。笑福亭鶴瓶が演じる伊野治という男で、村長の誘いを受け、長らく医者がいなかったこの村に赴...
佳作・駄作1日1本